ピーク同定

 

原理

ピーク同定は、検出されたピークのリテンションタイムが、同定テーブルの標準保持時間(Rt)と許容時間幅(Wt)に対し、以下の条件を満たしているかどうかを調べます。

 

@   Rt 2/Wt ≦ 検出ピークのリテンションタイム ≦ Rt + 2/Wt を満たすピークは、同定条件を満たしている。

A   一つのピークIDの同定条件を満たすピークが複数個存在するときは、信号値の大きなピークが同定される。

B   ピークIDの順番で、ピークのリテンションタイムが大きくなるように同定される。

C   リテンションタイムが等しい、ピークIDが複数個存在するときは、同定条件を満足するピークの中から、信号値の大きい順番で同定される。ただし、Aの条件は、満たすものとする。

 

ひとつの許容時間幅に複数のピークが存在する場合は、同定テーブルの設定のパターンで同定されるピークが変わります。

 

ID

ピーク名

Rt

Wt

1

Peak1

t

Δt

同定テーブル1

 

ID

ピーク名

Rt

Wt

1

Peak1

t

Δt

2

Peak2

t

Δt

同定テーブル2

 

ID

ピーク名

Rt

Wt

1

Peak1

t

Δt

2

Peak2

t

Δt

3

Peak3

t

Δt

同定テーブル3

 

同定結果

同定テーブル1          同定テーブル2                  同定テーブル3

 

参照ピーク

参照ピークが指定されると、同定テーブルの標準保持時間は、参照ピークの標準保持時間と、実測の保持時間との差により補正されます。

標準保持時間が補正された同定テーブルが次の繰り返し測定で使用されます。

 

 

○参照ピークの同定

指定されたRtの許容範囲内で一番信号の大きいピークが参照ピークとして同定されます。

 

○参照ピークを定義した繰返し測定

Peak2を参照ピークに定義した繰返し測定の実行例です。

 

・繰返し番号1の同定

解析メソッドにて定義された同定テーブル1で繰り返し番号1のピークを同定します。

 

ID

ピーク名

Rt

Wt

REF.

1

Peak1

t1

Δt

2

Peak2

t2

Δt

3

Peak3

t3

Δt

4

Peak4

t4

Δt

5

Prak5

t5

Δt

同定テーブル1:繰り返し番号1の同定テーブル

 

・繰返し番号2の同定

同定テーブル1により、参照ピーク(Peak2)を同定します。

同定されたリファレンスピークの実測保持時間[rt2]と、同定テーブル1におけるリファレンスピークの標準保持時間[t2]との関係より、補正係数 rt2/t2 を求め、同定テーブル1で定義されている標準保持時間を補正して、同定テーブル2を作成します。

 

ID

ピーク名

Rt

Wt

REF.

1

Peak1

rt2/t2 *t1

Δt

2

Peak2

rt2

Δt

3

Peak3

rt2/t2 *t3

Δt

4

Peak4

rt2/t2 *t4

Δt

5

Prak5

rt2/t2 *t5

Δt

 

同定テーブル2:繰り返し番号2の同定テーブル

同定テーブル2により、Peak1Peak5を同定します。

 

繰返し回数が2回以上に設定されている場合も、一つ前の同定テーブルで、参照ピークを同定して補正係数を計算し、補正された同定テーブルを生成します。

 

○参照ピークを定義した連続分析

連続分析において、分析シーケンスのステップが繰り上がり、分析メソッドファイルが切り替わった場合でも、新しい分析メソッドの同定テーブルに、同じピーク名の参照ピークが存在するときは、引き続き参照ピークにより補正された標準保持時間が使用されます。

 

ID

ピーク名

Rt

Wt

REF.

1

Peak6

t6

Δt

2

Peak7

t7

Δt

3

Peak8

t8

Δt

4

Peak2

t2

Δt

5

Prak9

t9

Δt

 

同定テーブル2-1:新しいステップの解析メソッドの同定テーブル

 

ひとつ前のステップの、最後の繰り返しで使用した同定テーブルのリファレンスピークの標準保持時間により、同定テーブル2-1のリファレンスピークを同定する。

同定されたリファレンスピークの実保持時間を rt2’とすると、新しいステップの解析メソッドの繰り返し番号1の同定テーブルは以下のようになる。

 

ID

ピーク名

Rt

Wt

REF.

1

Peak6

rt2/t2*t6

Δt

2

Peak7

rt2/t2*t7

Δt

3

Peak8

rt2/t2*t8

Δt

4

Peak2

rt2

Δt

5

Prak9

rt2/t2*t9

Δt

 

同定テーブル2-2:参照ピークにより補正された同定テーブル2-1

新しいステップの繰返し番号1のピークは、同定テーブル2-2を使って同定される。

 

○参照ピークが二つ以上定義された場合

参照ピークが二つ以上定義されている場合は、参照ピークの実保持時間と、同定テーブルで定義された標準保持時間との関係より、直線回帰式を計算し、その係数から、補正された標準保持時間を計算します。

 

三つの参照ピークによる補正式

 

例)Peak2Peak5を参照ピークと定義した場合の動作

 

 

ID

ピーク名

Rt

Wt

REF.

1

Peak1

t1

Δt

2

Peak2

t2

Δt

3

Peak3

t3

Δt

4

Peak4

t4

Δt

5

Prak5

t5

Δt

 

繰返し番号1の同定テーブル

 

rt2と、rt5により、補正係数aを計算する。

ID

ピーク名

Rt

Wt

REF.

1

Peak1

a*t1

Δt

2

Peak2

rt2

Δt

3

Peak3

a*t3

Δt

4

Peak4

a*t4

Δt

5

Prak5

rt5

Δt

 

繰返し番号2の同定テーブル

 

○ゼロ点のシフトを有効にする

連続分析画面の【Run】ボタンを押して取込みを開始する場合など、インジェクトタイミングのずれを補正する場合は[Zero Adj.]にチェックマークを入れてください。

 

ゼロ点シフト:無効

インジェクトのタイミングのずれは補正しない。

流路系に起因するリテンションタイムのずれを補正する。

 

ゼロ点シフト:有効

インジェクトのタイミングのずれを補正する

流路系に起因するリテンションタイムのずれは補正しない。

 

基準となるクロマトグラム

 

 

リファレンスピークを2つ以上定義して、ゼロ点シフトを有効とするとインジェクトのタイミングのずれと、流路系に起因するリテンションタイムのずれの両方を補正します。